圧倒的睡眠欲求

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天国ってどんなとこだと思う?

天国、と聞くと何をイメージするだろうか。
ためしにGoogle画像検索してみたら、圧倒的に青空が含まれる画像が出てきた。快晴は少なく、雲のうつっているものが多い。
私はクリスチャンではなく、聖書にもあかるくないので教義的な天国について無知であるけれど、天国という言葉からイメージするものはいくつかある。
浅いプール。レースのカーテン。不自然なほど真っ白な団地。遊具だけがぽつねんとある空地。ごく薄いピンクと水色。自分で書き出していても意味がわからない。それが好きだとかそこが天国のような場所だとか思っているわけではないけれど、頭に思い浮かぶ。
そして、もっとも強く連想するのは、真っ白な空間と、細く長い、どこまでも続く上りのエスカレーターである。
ただ、スーッと、淀みなくゆっくり進んでいく巨大なエスカレーター。
天国と聞くとエスカレーターを連想する。数年前、駅の細いエスカレーターにじっと立って、上へと運ばれているのはわかるけれど白い壁以外なんにも見えず、細いがゆえに前に立つ人で先もよく見えなかったとき、天国ってこんなかんじなのかな、と思ったことがはじまりだった気がする。ぎゅっと並んで立っている人が各々の行き先のことを考えているかスマホを見ているだろうとき、私だけが多分天国のことを考えている。そう思うとおかしかった。
けれど、天国とエスカレーターが結び付いているのには多分原因がある。なにが原因だろうとちょっと探せばすぐ見つかった。トムとジェリーだ。
トムとジェリーの、『天国と地獄』。8分間の短編アニメだ。
トムが死んでしまい天国行きの列車に乗りたがるが、いじめてきたジェリーの署名がないと天国に行けない。トムはあの手この手でジェリーに署名させようとするけれどうまくいかず、結局地獄に落ちてしまう、と思いきやすべては夢で、トムは喜びジェリーにキスをしておしまい。
多分幼少期にこれを見て、無意識に覚えていたのだろう。死んでしまったトムは金色にひかるエスカレーターに乗り、高く運ばれていく。
エスカレーターは完全にここからきている。気がついて笑ってしまった。なるほど、ならきっと私の地獄の入り口では、ライオンが迫力たっぷりに吠えている。

ではアニメーションを作った人は、なにから着想を得て天国までの道のりをエスカレーターで描いたのだろうか。そうやって辿っていくと、いつかは同じものに辿り着くのかもしれない。それは多分聖書であったり、絵画であったり。ではその前は?
ゼロから天国のイメージを作り出した人って、いるのだろうか。やっぱり神の天啓とかそういうのなのか。果てしなくてちょっと怖くなってしまった。



多分人には人の天国がある。
その多くがフィクションのイメージからできているのだろう。人によって触れるジャンルが違い、摂取するイメージが違うから、部分ごとにキメラのように組み合わさり、その人だけの天国がうまれる。
乳酸菌みたいな言い方しちゃったけど、完全に自分からだけ生まれたイメージの天国はあるのだろうか。ないだろうな。
私はどちらかと聞かれれば唯物論者寄りであり、霊魂を現実に信じていない。輪廻転生も、幽霊も、物語として楽しみはすれど、信じてはいない。人は死んだらそこでおしまいだと思っている。というか、そうであってほしい。自分の葬式はちょっと見たいけど。
そしてその状態で、なにも知らなくても持つイメージなんてあり得ないと思う。服を着ない民族がポケットの概念を理解できないようなもので。ちょっと違うかな。まあいいや。