圧倒的睡眠欲求

この記事は人間が書いています

ほんの二時間と半分、私の部屋はライブ会場だった

UNISON SQUARE GARDENの話です。

はじめて配信ライブというものを見た。ユニゾンの試みとしては二回目なのだけど、一回目はチケットを買わなかった。普通にうっかりバイトを入れたから。
あと所詮映像だろという気持ちになったことも事実である。
初回の配信ライブはなんと視聴者投票で1~30位の中からセトリを組むという内容だったらしい。そして第二回にあたる今回、31~70位の中からの選曲だった。なにその微妙な順位。セトリ予想が全然できない。

でもまあ一度くらいは体感して、それでも夢中になれなかったら無関心でいられるし、と悩みに悩んでチケットを買った。auIDに翻弄されているうちに日付が変わってしまったので当日ギリギリに当日券を買った。いしきがひくいファンなので許されたい。
でもまあ見るからには楽しみたい。一切捗らなかった部屋の掃除を自分でも驚くべきスピードで済ませた。久しぶりに露出した机の表面を拭いたら埃だらけで引いた。
折角家にいるのだからお酒でもお供にしたかったが、生憎痛み止めが必須の体なのでやめた。軟弱。

19時から入場可能だったのでとりあえずパソコン画面を繋いでおいて、バンドTシャツを選んだり髪をまとめたりアクセサリをつけたり、化粧はしなかったけど一応眉を整えたりした。気合いの問題である。
残り数分になると猛烈に緊張してきた。自室で座って待っているのに、映像でもどきどきするもんだなあ、と新鮮だった。
で、画面がカメラに変わる。ユニゾンが登場するときの、いつものあの音楽が流れる。あれを聞くと、ああライブがはじまる、と思う。出てくる。生きた人間が私の好きな音楽を生み出していると実感するあの瞬間が好きだ。
デジタルの時計がうつった。2分遅れのスタート。
斎藤宏介がエフェクターを踏んだ。音が止まる。
はじまった。
びっくりした。なんだこれ。全然ライブじゃない。
通常ではありえない角度のカメラワーク、近い距離感で三人が向かい合って一斉に音を出す。
そこに客席はなかった。ただただ、楽しそうだった。
音量をいつも動画を見るときくらいにおさめていたのをすぐに後悔して、二曲目のときくらい(MIDNIGHT JANGLE→fake town babyだとは!とっくに第一回で消化したと思っていた)に慌てて上げた。耳がギリギリ痛いかもくらいまで上げて、部屋の電気も慌てて消して、モニター以外の情報を遮断して、そこでようやく私は自覚した。
これはライブだ。
入り込めないかもとか、映像なんてと思っていたのが馬鹿らしくなるくらい素直にそう思えた。
音とびだけはちょっと気になったけど、部屋を暗くしたからか曲を楽しむのに邪魔な自意識はかなり薄れ、あとはもう時間を忘れて楽しむだけだと思った。

個人的に好きだったのは、というか期待してたけど本当に来ると思ってなかったのはlike coffeeのおまじない。イントロが響いた瞬間斎藤宏介がどうだ!という顔をして見えた。え、私の反応見えてる?と焦ってしまうくらい、どんぴしゃで、テンションあがった。ああきっといつものライブみたいに友人が隣にいたら、ここで目を見合せて笑う。これはどうでもいいことだけれど、サイダーロードが私の一番はじめに聞いたユニゾンのアルバムで、一番好きなアルバムだ。
23:25の、「少しあっては雨ふらし」のところで何故か絶対に思い出すのは高校へ行く途中の乗り換えの改札だ。毎回そこで聞いていたわけでもないと思うんだけど、やけに心に残っている。そうだ、高校生のときはっきりユニゾンを好きになった。あの登下校で一番曲を聞いていたかもしれない。
キャンドルの演出、えっ本物の火だ!というところにやけに注目してしまった。こういうのは配信ならではだなあ。
あと座った状態でチャイルドフットスーパーノヴァくると思わないでしょ、ホイッスルかわいかった。田淵は妙に弾きにくそうにみえたけど絶対大人しく座ってるからじゃん……と思った。暴れまわるより大人しいほうがなんか弾きづらそうと感じちゃうのはなんでだ。
crazy birthdayは大好きな曲なので本当に嬉しかった。マイクぶっ倒して床で転げ回る田淵に笑った。あいもかわらずめちゃくちゃだ。曲名に違わずクレイジー。せーのっ、ばかーーー!、やっぱライブハウスでなんも気にせず叫びたかったな。近所迷惑と親の目が怖いお年頃である。
未完成デイジー、はじめて聞いたときは全然ピンとこなかったけど、じっくり歌詞を感じるたび、なんて愛の歌だ、と思う。ラスサビ、「君が先に死んじゃっても それでも僕が守るよ 君が好きなこの世界を 最後まで愛せるように」 こんな愛ばっかりの歌ないよ 絶対とか運命とかドラマチックなもので盛り上がったりしないのに、世界ごと全部を抱き締めているような歌詞だ…結婚するならこの価値観の人とがいい、きっと幸せになれるから……
オーケストラを見に行こうで暗転、本編終わる演出最高の幕切れだった。潔く、清々しく、気持ちいい。

他にもいっぱい好きな曲、好きなところはあるけど、言い切れないしうまく言える自信もないのでこのへんで。なによりもこのバンドのスタンスが好きだと思える。
基本的に、私はバンドの人間自体を好ましく思うことはあまりない。曲が好きだからある程度のクオリティでそれを生み出し続けるバンドを信用している、くらいの距離感でいる。私生活には興味がないし、信条をMCで熱く語られると冷めてしまう。私が曲から受け取ったものがすべてだ。言葉にして補足するくらいなら音楽に頼るな。自伝でも書いてろ。これは暴言です。すみません。
とにかく自分でもどうかと思うそういうひねくれた部分を、UNISON SQUARE GARDENはいとも容易く捩じ伏せてしまう。
だって今回のライブぜんぶで喋った台詞ときたら、

UNISON SQUARE GARDENです!
今回もMCはなしっ!
オマケ。

これだけだ。まじでこれだけ。暴走列車かってくらい曲が続く。二時間半、ほぼノンストップ。たぶん今回は18曲、プラスドラムソロやらセッションやら。慣れない配信、それも色々大変なこの状況で、なんにも触れずただ音楽を届けてくれた。
ああもう、こういうとこが痺れるくらい好き。
全部の情報を追い求め、なにかを常に好きでいることは私にはできない。向いていないのだと思う。
でも、これから先一生とは言わないけれど、それを目の当たりにするたび、私はユニゾンを好きになってしまったのだと心から感じる。多分はじめてライブに行ったあの日から。

配信カメラは至近距離から、これまでにない画角で三人を見せてくれた。水を飲み、汗を拭くだけでドキュメンタリー映画みたいにかっこよかった。最高の舞台だったよ。
でもやっぱり、実際に会いに行って、彼らも会いに来てくれる、生のライブがいちばんだとも強く思った。あの、はじまる前は周囲にいっぱいいる人間がひたすら邪魔で暑くて疎ましいのに、終わったら同じ体験をした同士たちよ……、とうっすらした親近感を抱いてしまうあの感じ(私だけかもしれん)も恋しいし、グッズ列で直前まで迷いたいし、やっぱり会いに行きたいよ。回線なんて気にしたくないし音がとぶのも集中できない。同じ空気を吸わせてくれ。頼む。
でもまあ今ほんとに会場で同じ空気なんて吸ったら大問題だしね。これも新しい形なんだなと思うし、配信にしかないよさもあったし、存分に、予想以上に楽しめました。
いつになるか不透明でも、一日も早く、なにも心配せずライブに行ける日が来ることを願ってやみません。